野口編集子様

 

ご無沙汰致して居ります。やっと台風一過にて青空が見える様に成りました。昨日朝、荒山兄が十八日に行はれた同期会の写真を私に見せに来てくれました。懐かしい顔を眺めながら、特に東京組の方々が多く元気に参加されていたのには感心致しました。私も参加の予定でハガキも書いていたのですが残念でした。

 

５月３日、連休の始まる日、知人より頼まれまして、奈良、飛鳥の先の熊取町へ古家屋の検分に参りました。格安なので良ければ売却して欲しいとの事でした。案内の方が閉まっている玄関から雨戸を空け明かりを取り入れ、二階も未だ頑強に出来ていますと先に上り、私も続き暗い階段を昇って一番上だと思い足を踏み入れようとしたところ、もう一段有った階のひさしに足が引っかかり、あっと言う間に背中から真逆さまに下へ落ち、土間板を突き破って、気が付いたら床の張り板の間に動けなくなっていました。一時、何が起こったのか記憶が飛び、上の人や下の人が突き破った床板を懸命に引き剥がして呉れていました。

 

顔、頭が、血だらけになっていましたが、幸い背中を丸めて落ちたようで、腰を打っていなかったので、案内の人の幾度も“大丈夫ですか？”の掛け声に我に返って二人に引き上げて貰いました。なかなか救急車も来ず、又この連休にて奈良の何処へ連れて行かれるか不安にもなり、歩けるようなら取り敢えず案内人さんのお店まで行って手当てをと云はれ車で戻り、顔、頭の血をふき取って貰う事にしました。全くの大失態でありました。暫く休息した後、ふらつきながらも、橿原神宮からアベノ、地下鉄と乗り換えて帰りました。

 

連休でもあり、自宅にて痛む背中に一杯膏薬を張り１０日程寝て居りましたが、年金なしの私ゆえ働かねばと思い、久々に難波へ人に会いに出かけました。喫茶で３０分程話をして外へ出た途端、意識を失ったように倒れて、直ぐ意識は戻りましたが、これはいけないと考え、翌日、瓢箪山の貴島病院に黒田良太郎先生を訪ね、念入りに診察を受けました。結果“左前頭部に血腫が出来ている、今は心配無いと思うが腫れて来ると右側に災いが出てくるから“と云はれました。此処への診察は遠いから急の時にと、大阪府立緊急病院が良いからと紹介状を頂き、翌日、府立病院に行き再度CT等の診断を受けましたが、同じ診断でした。

 

６月２５日過、時々眩暈、立ち眩みが多く成り、字を書くのに思う様に掛けない、怪しいと思いつつ、２８日朝、荒山兄が来て暫く話し込んで彼が帰った後、9Fの自宅に戻って、トイレに行こうと立ちあがろうとしたが立てない。自分の右足が全く動かないのです。這うにも右足に力が入らないのです。黒田先生の言っていた右側への影響が出始めたと考え、早い方が良いと思い、日曜明けの早朝、救急車をお願いし、未だ信じられない家内は“もう少し待ってタクシーででも”と云うのを待たず、２９日早朝、入院、CT撮って即、手術になりました。

 

頭に何重にも被せられ、全身麻酔をするのだと思っていたら、暫くしたらガリガリと頭蓋骨を削る音が聞こえて来て、次にシュシュと液体様の噴出す音が聞こえるのです。何人かで押さえられているようでしたが、余り痛みは感じられませんでした。２時間位掛かったかと思いますが、病室に帰ってみて知りました。なんと足が動くのです。頭の上にパイプが突き出してあって、暫く小量ながら滴る血の為、傷口はバンソコウで幾重にも張って有りました。家内が医師より聞いて来たのか相当の血が絞り出されたらしいと言い、医師が来られて“貴方の頭蓋骨は硬かった”と笑われました。本当に感謝いたしております。１０日程で退院いたしました。

 

暫くは用心しつつ暑い夏を無理せず、永らえた命、頑丈に生んで呉れた母に感謝しつつ、大事にしたいと考えて居ります。以前より元気に成った様に感じて居ります。長くなりましたが斯様な訳で会にも出席出来ませんでした。

 

近況報告ながら又お目に掛かれます日を楽しみに致して居ります。　千葉拝