当時、私はミナミのビル売買交渉にて、石原Ｕ氏と共に買手側の西氏（昔オリンピック馬術の西中尉の親戚）と言う方といくたびかお会いしていましたが、音信が途絶えたため、確認の為に山口県の下関、彦島（巌流島の傍）へ参っておりました。１２月２６日に帰阪、早々に報告のため河内長野に有る石原Ｕ社長の会社に行って会うなり開口一番、“お前とこの団地で何も聞かなかったか？”と云われ何か解らず、きょとんとしていたら“ママ死んだらしい”との訃報を聞き驚きました。

 

実は私も、この新団地が出来て人気が高く、“太平洋一人ボッチの横断者”堀江洋一氏や松竹、吉本の芸人さんとか名の売れたヤクザ人が多く、やっと入居したところで、まさかクラブのママが近くに住んでいる事すら知らなかったのです。

石原Ｕ氏から“取り敢えず、ママ宅へ行って、様子をしらせて呉れないか？”と頼まれ住吉へ戻り、故人宅へ行き“石原社長より頼まれて参りました”と云うと、待ち兼ねた様に身内の方から事情説明があって石原氏からの指示を待っておられた様でした。

葬儀を集会所にて行うと言っているからと伝えると“それは駄目だ、近くに何処か良いお寺を捜して欲しい”と頼まれて又奔走、住吉大社の裏側にやっと良いお寺を見つけて了解をとりました。

 

年内に葬儀を済ます為に本当に忙しい毎日でしたが、当日の会場の入り口の両側には大きな花輪が一対飾られ、官房長官竹下登の文字が大書されて居りました。石原Ｕ社長の贖罪の気持ちが有ったのでしょうか、会場にはミナミからの参列者が多く、花輪に書かれた文字に驚いて居りました。

 

新店のクラブ経営を、Ｈマネージャを呼び石原社長の意向を示して元のクラブに戻し、年明けて譲渡処分をしました。ミナミでも名前の通っていた“クラブ奈良“クラブ鎌倉”の経営者に引き継がれて高級“クラブ京都”と変わって行きました。

元の“クラブ一番”も暫く面倒を見さされましたが、芸人の“京唄子”さんに引き取られて“大口”と改名されていました。

さらに余聞ながら住吉近辺に少々の貸家も持って居られた様で、後々の子供さんの事を考えて頑張って居られた様子でした。併し新店クラブを開店するに銀行からの借り入れも有って友人のクラブママが保証人に成って居られて、石原Ｕさんの極道時代を良く知っていて取引銀行に来ても相手にしない様言っていたらしいですが、結局は保証人のママに迷惑掛けない事の証言をとり承知すると言うことも有りました。

子供さんの生活面倒を見なければならない責任は生じましたが、整理しての上の事ですが、遺産として数千万の資金が石原Ｕさんの管理下に入る事に成った訳です。

 

石原Ｕ社長、東京にての事業を失敗して大阪に戻って来ていても河内長野に会社を作り、未だ粉飾決算が基で身を引かれたとは言え、健在の河内周辺のボスの父重太郎氏を会社に据え、玩具や自転車その他の製品を当時の“長崎屋”に売り込み、再起を期して居られました。

 

出来上がった子供用の乗って足で扱ぐプラスチックの弁慶号や機関車の見本を唐草模様の風呂敷に包んで、夜遅くまで呑んでいても、朝一番の新幹線に乗り東京へ営業に出掛けられる姿を度々見て感心して居りましたし、奥さんの元女優、杉田弘子さんも金剛団地に共に暮らされて居りました。幾たびかお伺いしましたが、化粧もされずとてもあの美人の女優さんとは思え無いくらいに慎ましく男の子供さんと暮らされていました。

 

斯様な裏事情が有っての事を踏まえて石原Ｕさんに通天閣観光�鰍ﾌ株式譲渡話の経過をビル処理話の合間に話していたましたので、何とかこの株式譲渡の話にも力を貸して貰おうとの試惑も有りました。

和田社長との交渉の結果、“石原Ｕさんから”３５００万を作るからお前の取り分は後にしろ、株券はそのまま暫く銀行に預けたままで権利譲渡を受けよう、　今、温劇は現金が必要だからそれを先にする”と言われ、和田社長も了承されました。

唯、石原U社長との正式契約は金を作る時間がいる為に暫くの時間が要る、それまで待って欲しいとの事を和田社長に伝えて了解を得たが、温劇�鰍ﾌ方へはこの経緯を私が伝える事で決まった。和田社長には銀行側とのトラブルの無いように事前に約束を採って頂く様にお願いして於きました。　

私もこの約束事の顛末を温劇�鰍ﾌ役員方から委任を受けた責任上、報告し了解を取るためにお伺い致しました。　
つづく