昭和43年５月に５代目の通天閣観光�鰍ﾌ新社長に温劇�鰍ﾌ若社長が就任致しましたが、以前にも述べました通り、以後も一向に浪費癖が直らず、懸命に運動致しました土地取得のための融資話の懸案も先方の調査からか不調に成りました。（人から聞いた話ではテレビに出て放蕩振りを話して居たらしい）

友人で有っても社員では無い私ですが放って措けず、通天閣観光�鰍ﾆし他の観光事業を計画する事を助言も致しました、特に当時、私が凝りだしていた磯釣り旅館からの情報から和歌山周参見湾口に広大な土地と温泉を掘り掛けたまま倒産した安い物件を教えられて検討して見ないかとか具申もして見ましたが自分で見に行こうとはしませんでした。既存の白浜温泉の売却物件には遊蕩半分にて行って居りましたが話には成りませんでした。（この物件は数年後に高値にて売買され現在は観光ホテルに成っています。）

併し考えて見れば私も迂闊でした。既に本体である温劇�鰍ﾉは既に若社長の浪費から資金的に余裕はもう無かったでしょう。

通天閣観光�鰍煌J業当初の昭和31年度には約160万人以上の入場者が有って賑わいを見せましたが年毎に下降線をたどり、W社長が就任した昭和４３年〜４５年の通天閣観光の入場者数が６０万人を切る有様に成っていました。新世界界隈そのものも昭和３３年の売春禁止法に伴い飛田遊郭の廃業が大きく、観客減少の要因に成りつつ有りました。封切り映画館もミナミは勿論、新興のアベノの映画館に圧されて減少、当然の如くW社長本拠の温泉劇場�鰍ﾌ経営する映画館（3本立）、新花月寄席、ストリップ劇場の収入にも響いて来ておりました。

昭和45年春、若社長も同族会社である一同から突き上げられたのか、ミナミに創った店を処分する事に成り、造作に金の掛かった店でしたが処分致しました。更に彼の決断？か、帝塚山の邸宅（209坪余）を売却する話に成ります・両親が苦労されて作られた邸宅は建屋の1/3くらいを立派な築山風の美しい庭があり、吉本興業�鰍ﾌ社長から贈られたと言う素晴らしい灯篭が据えられていた事を覚えています。但しこれは邸宅の売却時に吉本興業へ返納されたと聞いています。（売却額六千万以上）

引越し先は奥さんの実家が所有されていた豊中の方へ移ってゆかれましたが誠に痛ましい限りでした。

通天閣観光�鰍ﾌ二期目の社長には付かずに、予てから先代社長時代から専務だったY氏が社長に就任しますが、暫くの間、若社長へのつなぎつもりだった様に思います。元々この方は温劇�鰍ﾌ経理担当でしたが私見では温劇の元専務追放の黒幕で若社長擁立に動いたと思って居ます。養子の元専務を口実を設けて追放したのが、結果として御曹司に対する重しを取ってしまって歯止めが利かなく成ってしまったのです。

併し、御曹司は身軽になったのか、或いはヤケに成ったのか夏を過ぎると突然失踪いたします。関係者も全く行方が掴めません、私方にも問い合わせがありましたが思いも寄らぬ事態に驚きました。ミナミの夜の社交界はもとより北新地の街々を探して見ましたが全く噂の欠片も聞けませんでした。

当時、私は大手の建設会社の事務方から殆どの印判類の発注の仕事を受けて居りましたが、出入の業者の中に元野球関係の方が居られて不動産情報のまね事を覚える様になっていました。その様な中で知人からミナミの西側（現在のアメリカ村）に建設中のビルの代金未支払いから問題が生じ相談に乗って欲しいと頼まれ奔走中の事でした。現在の如くに未だ繁華な時で無くビルの入居契約が無かった様でした。

要は建設会社から競売申請が出され、担保物件の中にミナミの1等場所の営業店舗も含まれており、それを切り離して欲しいと言う難しい頼みでした。無理を承知の事件事なのです。

斯様にごたごたした時、昭和45年9月末頃でした、温泉劇場�鰍ｩら相談があるからと呼び出しを受け訪問いたしました。　内輪だけの話として重役方はこれ以上、社長の勝手は許されないし会社も金銭的に社長宅を売却したとは言え、まだまだ切迫した状況に変わりは無く、前々から検討していた“通天閣観光�鰍ﾌ所有株約51％を極秘に売却したい、それも出来る限りプレミアを付けて”との要旨でした。その時始めてその株券が去る銀行へ既に担保として使われているのを知りました。

少々身に重い仕事だと思い暫く考えました。結果、受ける事に決めました。大阪のシンボルが我が手に懸かっていると自覚致しました。通天閣観光�且走{（1億500万）の内￥5千３６万２５００、の譲渡話です。報酬は極秘にプレミア分の10％、但し経費は自己負担、半年〜１年未満、の約束にて引き受ける事に致しました。

この年、昭和４５年３月６日にミナミの地下街に“虹の街”が開業、１５日には“日本万国博覧会が開催〜９月１３日まで７７ヶ国参加、観客約６５００万人”と言う年でしたが、通天閣には少々のおこぼれは有っても焼け石に水でした。株式譲渡の件は以前の東京での融資話の伝を頼って数社を訪問し打診致しましたが全く効果がありません。

東京方の感覚は未だに収まり切らぬ“釜が崎騒動”のイメージが有ってと言うより“釜ヶ崎と同じ街”の中にある通天閣だと混同されていて怖い街だとの感覚でした。前にも述べましたが釜ヶ崎の騒動をテレビが放映する際、先ず通天閣をアップしてからカメラを引いて釜ヶ崎を写し放映されるのです。これには若社長も良く怒っていたのを思いだしました。

東京に行きました時に若社長が良く面倒を見ていたコメディアンの和田平助（逆さまに読むと“助平だわ”）を当時有名だった日劇ミュージックホール（ストリップショー）に訪ねて若社長の失踪を話し手助けしてくれる様にも頼んでゆきました。終わるまで楽屋に居りましたが新世界温劇のストリップとは桁違いの美しさにてここからのダンサーには多くの俳優に成って行かれた人々が居られます。

余談ですが、若社長に就任した頃、在阪某球団の大物強打者と交際の有った、未だ若くて有名に成り掛かっていた銀座のクラブHママ（後に“横浜黄昏”や“嘘”の作詞でも有名）との別れ話を付けに行くから同行して欲しいと言われて行った事も有りました。先日、亡くなられた記事がでて思い出しましたので。

大阪名物の話は矢張り大阪と思い直しました。噂に成ってはと色々苦労いたしましたが、赤字に近い通天閣の街中には株式を売りたい人は有っても大きな株式を引き受ける力の方も有りません。その様な中、旧大阪スタジアムの専務にもお会い致しましたが駄目でした。暫くして紹介者が有って故松尾国三社長の経営された新歌舞伎座（千土地興行�梶jの重役とお会いする様にセットして頂きました。　　　　　　　　　　　　
　 つづく