「又、お前か！」
「そんな事言わんと、もうちょっとだけ付き合って下さい。」
今年のお正月二日に松原和子さんから電話が掛かって来ました。
新年の挨拶もそこそこに 「実はうちの息子の嫁と石原さんの亡くなった娘さんとは学生時代からの親しい友達らしいのよ。」 「まさか。」
今風に言えば 「ウッソー！」 「マジー？」と言ったところでしょうか。
松原さんの話によると、元日に息子さん一家がお母様の所にご挨拶に来て居られた際、松原さんが私の年賀状を見ながら、何気なく呟かれた一言「石原さんは娘さんを亡くされ、奥さんは入院中だし大変の様ね」 それを側で何となく耳にされた博子さんが 「その亡くなった石原さんて私の知ってる石原さんかしら？」 これが事の始まりだった様です。
年賀状の住所は東京世田谷になってましたから、石原さんなら以前千葉の柏だった筈と早速調べられたら、間違いなく柏が出て来ました。
娘は結婚してましたが子供は無く、夫の勤務地大阪で亡くなった為、昔からのお友達にどの様に連絡されたのか全く分からず、気にはなっていました。
矢張り博子さんは、後刻娘が亡くなった事が分かったものゝ、詳しい事情や何処へお参りに行けばよいかも分からず、二年以上も探し続けておられたのです。
早速松原さんと相談、未だお墓がありませんので、三月のお彼岸に我が家で小さな精霊棚を設け、お線香をあげて頂く事になりました。
当日松原さんと博子さんを出迎えましたら、何とあとお二人お友達を連れて来られたのです。このお二人も娘と学生時代から仲の良い
お友達で、矢張りお参り先を探しておられたのです。
皆さんには久し振りに娘に会って頂き、大変喜んで頂きました。
娘もきっと懐かしいお友達に会えて喜んでいたに違いありません。
当日はお客さん二人の予定が四人に増え、狭い我が家では何の
今回のお友達と娘の再会は、奇跡と呼ぶしかありません。
松原さんが何気なく呟かれなかったら・・・・・・。
博子さんがたまたま側に居られ、気付かれなかったら・・・・・・。
何事も起こらず、お部屋は静かだった筈です。
ちょっと大袈裟ですが、私はこの呟きを巷間ネット上に五万と溢れる呟きの頂点に値すると思っています。
三人のお友達のお参りしたい一念が通じたのか、娘が皆さんにお会いしたくなって呼び寄せたのか、想像の世界でしかありません。
前篇で申し上げた様に、きっと神さんが家内の事故をイタズラし、娘を奪って私を見放した仕打ちが余りに厳しかったので、少しイタズラに善意を添えてお返しして呉れたんだと思っています。
何でもお見通しの神さんの怖さを、この歳になって初めて知らされた気がします。
「神さん、余り後が無い私をいじめないで下さい。お願いします。」
二度のお付き合いにお礼を申します。
平成２７年６月 草 々
