偸安の楽し夢みる秋夜かな　　　　　　　久貝貞子

偸安＝目先の楽しみを貪ること　と辞書に載っていました。
古い中国の言葉らしいです。

道の脇跳べば採れそな通草かな　　　　　松浦武子
さんま焼く市井の暮らししみじみと　　　浅香さとみ
夕焼けやもつれて光る芒の穂　　　　　　今井由紀子

茶の花や白に黄の蕊楚々として　　　　　松浦武子
スリッパの裏返ってる残暑かな　　　　　浅香さとみ
散歩道コスモスゆらぐたおやかに　　　　塩田亘子
友の名が浮かばず夜長老い深し　　　　　今井由紀子
帰り道土手を飾るや曼珠沙華　　　　　　久貝貞子

あい色の夜空孤高の月煌る　　　　　　　塩田亘子
暑き日や萩の花芽も遅くつき　　　　　　久貝貞子
名月や一人静かに観るも好し　　　　　　松浦武子
秋立つや土やわらかく風届く　　　　　　今井由紀子
桔梗花トラジの詩の哀しさよ　　　　　　久貝貞子
芋の露空を映しつころころと　　　　　　松浦武子
この家に何が足らぬか秋の風　　　　　　今井由紀子

枯れすすき素焼きのつぼに侘と寂　　　　塩田亘子
猫じゃらし風の遊びに揺れやまず　　　　今井由紀子
秋風に堂の佛もほほえみて　　　　　　　久貝貞子
新聞のパズルにはまる夜長かな　　　　　浅香さとみ

五期俳句会　第百四十六回　十月七日
　
今回は会場が取れなくて、一寸贅沢をして上六のホテルで食事をした後一時間ほどそのまま席を借りて開催した。今井さんも、一緒に食事に加わって楽しくおしゃべりをした。