０５．０６．１１
談 合 談 義
石 原 靖 造
ちょっとお堅い話で恐縮ですが、退屈させない様に努めますので読んで
みて下さい。
またぞろ道路公団入札に絡む談合が明るみに出ました。
「性懲りも無く人生棒に振ること又やってる。馬鹿な奴らや。」世間一般
はもう談合に麻痺してますから、これで通り過ぎてしまい何故起こったのか
と言う事まで思いをめぐらせる人は先ず居ないのではないでしょうか？
もう時効ですから白状しますが、ある談合に加わった体験から何故こうな
るのかを振り返ってみました。
お役所がある競争入札を行うとしましょうか。一般的に上司からは「落札
して来い、但し損はするな」と言う指示が出ます。最初は手探りのつもりで
原価ぎりぎりで札を入れます。これなら仮に落札しても損はしてませんか
ら、上から怒られる事はありません。然し、これでは先ず落ちません。
どうしても契約をほしい誰かがもう少し下値を入れたからです。次回は
少し赤字でも落とすだけ落とし採算は仕入れを叩くなりして見繕う
作戦で何とか成功したとします。その次は他社に更に下を掬われ赤字
覚悟なのに失敗する事になります。畜生！とばかり今度は更にその下を
くぐらねばなりません。こうして疑心暗鬼の切り合い合戦は泥沼化して
いくのです。
お役所の方は競争させて安く買ったのだから何ら問題ないと思うでしょうが
そうは行かないのです。“安かろう、悪かろう”が納入される事になりますから、
50年はもつ筈の道路や橋梁が20年しかもたなかったりと言った事が起こるの
です。阪神大震災で倒れた高速道路から手抜き工事が出て来ました。
あの類です。国民の税金で再度作り直さねばならず結局高いものにつく
“安物買いのゼニ失い”に終わります。
かくしてやり場の無い泥沼時代は暫く続くことになります。
当然の事ながら業績は落ち、上司に怒られるばかりか昇級も遅れ、
ボーナスも減ります。
その内にもうヘトヘトになり何故こんな損ばかりする馬鹿げた事をやらなきゃ
いけないのかと空しさで一杯になり、やけ酒の度合いも増える事になります。
その頃になると何処からとも無く納入者の間で“何とかならないか”と言う
ひそひそが聞こえるようになります。こうなれば皆共通の苦悩を抱えています
から話は早いです。一度皆で集まらないかと誰かが言えばそこから先の話し
合いは一直線で纏まります。
“落札して来い、損はするな”上司の命令は一辺に解決です。
こうして談合は生まれ我世の春は始まります。業績は上がり、昇進もボーナス
もホイホイです。麻薬と同じでこの甘い蜜からはもう逃れる事は出来ません。
然し“好事魔多し”とはよく言ったもので、磐石を誇った談合の結束は或る日
突然崩壊します。必殺の一撃は内部告発です。正義感に燃えた蜂の一刺しも
ありますが、スクラム組んだ筈のメンバーの中で上司と喧嘩したり、冷遇受けたり
した者が腹いせにぶちまけてしまうのです。
かくして検察庁、マスコミ、政治家、天下り役人が入り乱れて大騒ぎになり
（今やってますね）、誰かがブタ箱に入って一巻の終わりになります。
以上でお分かり頂けた様に、入札ー泥試合ー談合ー破滅、このプロセスは
時代が変わっても同じだと思います。ですから入札が行われているところでは、
泥試合の真っ最中か談合まで行ったかどちらかと言う事になります。
こうして見ますと、入札と言う買い付け方法は談合を生み出すと言う点で
必ずしも褒められたやり方ではない事になります。謂わば入札と談合はコイン
の表裏の様なものと理解した方が良いかもしれません。
では如何いう買い付け方法が良いのか？ 批判して駄目と言うだけで代案を
示さないのは卑怯ではないかとの謗りを受けそうですが、こればかりは、そんな
ものあるならとっくに頭の良い人が考え出してるでしょうと逃げたいところです。
悪い頭であえて考えた事ですが、買い手と売り手（グループ）との間で取引案件
の妥当な原価が幾らかをサッカーのレフェリー的中立第三者を入れてお互いが
納得するまで徹底的に追究し、最後はレフェリーに断を下して貰います。それに
然るべき労働対価つまり口銭を乗せて契約とするという事くらいしか浮かびません。
“そんな絵空事うまく行く筈無いだろう”と言われそうですが、こちらもやって
見ないと分からないだろう”としかよう言いません。
如何したら談合を防げるか？ 一度頭の良いお役人に納入者側に入って貰い、
泥試合からボーナス減る事まで経験して貰ってから、その良い頭で考えて貰えれ
ば談合無き入札に向け何かが出て来るかも知れません。
これから先も間違いなく幾多の談合が表に出て来ます。その時“成る程、
あれか！”とこの一連のプロセスを思い出して貰えれば幸いです。
“お前は如何して捕まらなかったのか？”
“高津の看板に傷を付けられませんから必死で逃げましたよ。”
ご一読にお礼を申します。