阪大病院とか慈恵医大病院の様な急性期病院の後、治った人は退院して自宅へ、未だ引き続き治療・リハビリの必要な人は療養型病院へ転院する事になります。この療養型病院でも治るか、自宅療養まで立ち直って退院出来る人と、ここで長引き私の家内の様に最期を迎える人に分かれます。

 

この療養型病院へ移る時に出てきた条件として、通常の室料が掛からない４〜６人部屋なら３〜４か月、差額ベッド料が発生する二人部屋一日８，０００円か個室一日１５，０００円なら何時まで居て貰っても良いと言うのです。

 

この様な病院の事情に疎かった私は、３〜４か月で又転院では病人が環境変化で悪化するし、転院先も簡単に見付からないとの話でしたので、覚悟を決めて、二人部屋が空いてない事もあり、個室を頼む事にしました。

一日１５，０００円ですから月４５万円、それに医療、介護費用等も相当額掛かりますから、月締めて６０万円、年間７２０万円と言う気の遠くなる数字が出て来ました。長引けば破産する事間違いありませんが、兎に角看病を優先させ、後は走りながら次の方策考える事決心しました。

 

こうして個室看病はスタートしましたが、ここで又私は自分の馬鹿さ加減を知る事になります。

一日１５，０００円も払うのだから、医療・看病・介護の中身も厚くなる事期待してましたが、これが全くの理解違いで、唯個室料を取られるだけで、その他の内容は一般病室と何ら変わらないものでした。

又、個室にテレビと冷蔵庫はありましたが、浴室はシャワーのみで浴槽はなく、便器は腰を下ろせば飛び上がる程冷たいもので、病人は寝たきりですから使えませんし、私も病院内のもっと良いトイレを使うと言う有様でした。

 

少々頭にきた私は二週間程経過した頃、病院の責任者と話しました。

「この個室のサービスは余りにもひどいではないか！世の中飛行機のファーストクラス、新幹線のグリーン車なら一般席と全然サービスが違うし、月４５万円は豪華マンションが借りられる額である。価値のあるものにはお金を払うが、こんな価値の無い病室には払えない」と自分の認識不足も認めた上で強く文句を言いました。

翌日すぐに返事があり、月末までに四人部屋の一般病室を用意すると言うのです。ああ、取り敢えず破産しなくて済んだと思いました。

結局その個室には１か月近く居て高いベッド料を払いました。

 

其の後３〜４か月で又何か病室の話があるかと思ってましたが、５か月を過ぎても何の話もありません。

私の様に毎日病院へ足を運ばれ、同じ悩みを抱える人同士が寄れば、“未だ病院から部屋の話は来ないか”と言う話で持ち切りでした。

皆さんその筋の情報に詳しく、誰かさんは身寄りが無いから、もう二年居られるとか、あの人は脳梗塞で動かせないので一年になる、と言った具合です。

病院もベッド料には政府の補助に限度があり、経営上そう言う人の分をどこかへ割り振らねばならないのでしょう。

それにしてもあの個室に何時も誰かが入って居られるのには感心しました。世の中には金持ちは居るものです。

 

６か月を経た或る日、矢張り病院から話がありました。入院が長くなってるが、もう余り動かさない方が良いので四人部屋一日２，７００円か　二人部屋一日８，０００円にしてほしいと言うのです。

何とか回復させて家に連れて帰りたかった私は意を決して二人部屋を頼む事にしました。

家内の容態が急変して最期を迎えたのはそれから二ヶ月後でした。

余りお金を使わせない様気を遣って呉れた様な気がしてならないのです。

 

長くなりましたが、申し上げたかった事は、怪我や病気が長引けば如何してもお金が掛かってしまいます。急性期病院から次の療養型へ移る際、患者の状態、支払能力等を巡って色々と強い駆け引きがある様ですので、こちらのペースで充分調査し、納得の上で決められるべきと思います。

 

“救急車”

これで最後ですので余り肩の凝らない内容を心掛けます。

 

“ピーポー、ピーポー”　普段何気なく耳にしても他人事の様にしか聞こえない救急車、生まれて初めて関わったのが、平成２３年家内が事故で千里中央から豊中病院へ搬送された時でした。私が病院へ駆け付けた時は、既に救急車は引き揚げられた後でした。

 

家内の手術後落ち着いたのを見計らって、北千里消防署へお礼に出向きました。私は救急車がお金が掛かるとばかり思ってましたから、“後ほど請求あると思いますが、幾ら位掛かってますでしょうか？”とやってしまったのです。救急車が公費である事を知らなかった私をどうぞ笑って下さい。

 

ところで皆さんはご自身か付添かも含め何回救急車のお世話になられたでしょうか？私は家内の付き添いで半年間に３回あります。

初回の時、車が出発して直ぐに住所・氏名等必要事項を書いて下さいと用紙とペンを渡されました。ガタガタ揺れる車の中で字は書けるものではありません。「こんなに揺れていては、とても書けません。次ぎ停まったら書きます。」すかさず、「これは救急車ですから赤信号でも停まりませんよ」仕方なく自分でも読めない様な字で渡しましたが、其の後何も言われなかったところを見ると何とかなったのでしょう。

 

救急車に乗っている時は病人の事で頭が一杯で、とても回りを見る余裕等ありませんが、後で落ち着いてから思い返してみますと、目の前の人や車を全部止めて、しかも反対車線を赤信号無視で走り抜ける訳ですから、世の中に大変な迷惑を掛けている事に気付きました。

家内が転院の際、病院手配の寝台付きタクシーが僅か１５分程で１２，０００円取られましたから、医療班の職員が二人も付いた救急車に三回（初回を入れると四回）もお世話になれば、大変な公費を使った事になります。

 

この国の素晴らしさに感謝すると共に、せめて住民税を喜んで払う事で勘弁して貰おうと思っています。唯、あの“ピーポー”はもうご免です。

 

三回に亘り駄文にお付き合い頂きお礼を申します。何かの参考にして頂ければ幸いです。

最後になりましたが、編集長殿には大変お世話を掛けました。有難う御座いました。

皆様のご健勝を心からお祈り致します。

 

　平成２８年２月７日　　　　　　　　　其の３　　以　上