グリフィン神父様とキリスト教入門講座

コロンバン会のグリフィン神父様は、昨年司祭５０年の「金祝」を受けられました。昭和２７年に来日、千葉寺で司祭としてのお仕事を始められた頃は、まだ戦争から立ち直っていない感があったそうですが、来日してしばらくは、人々とコミュニケーションができないのが一番の悩みだったそうです。それ以来４８年間ずっと日本で宣教されてこられました。日本語はもっと上手な神父様にくらべると、今もちょっと苦労されておられるなと思いますが、グリフィン神父様は、どの神父様にもない素晴らしい宝物をもっておられるのです。それは、…

グリフィン神父様は、従来のカテキズム教育と全く異なった、新しいキリスト教入門講座を編纂され、全国に広められ、各地でイエスに出会う道しるべになっている方なのです。神父様自ら「この講座は日本に来て最大のめぐみ」といっておられます。
私も１１年前、ある調べものがしたくて、意図せずに茅ヶ崎教会でブランチ神父様からこの講座をうけ、受講中反抗ばかりしていましたが、知らず知らずに心が開け、そしてついにイエス様と出会ったのです。私にとって一生のできごとだったのです。
私はこの講座を通じてグリフィン神父様のいわば孫弟子になっていたのですが、昨年藤沢教会で５年ぶりでこの講座のリーダー養成講座を開かれることになり、グリフィン神父様の指導に直接接することができ、いわば孫弟子から直弟子になれたのでした。

今月のテーマでこれを取り上げたのは、この講座の特徴を紹介し、現代におけるその存在意義をあきらかにしたいのが目的です。
それはまず、従来入信前の志願者に行われていたカテキズム教育をみておけば、その特徴がわかります。なんと１６世紀イエズス会の宣教師が日本に来て以来一貫して、カトリックの信仰のエッセンスをまとめた「公教要理」を教科書として教えてきました。
それは唯一の神がおられ、天地を創造されたことから始まり、人類の原罪の由来、イエス・キリストによる救い、天国と地獄、死後の審判、悪魔の存在、信徒の守るべき戒律などを体系的に箇条書きにあるいは問答式にまとめたもので、学ぶ人はそれを一方的に教えられ、暗記させられて卒業し洗礼を受けたそうです。

以下は講座の間グリフィン神父様が講座自体について語られたことばです。順不同ですが、これらを聞けばその特徴が浮かんでくることでしょう。

この講座のねらいは、あなたの心の回心。知識の受け渡しではない。
回心は、しかししたくないもの。固定観念に安住していたい。それは生きなくなること。

聖霊は、しなやかな心にしか吹かない。型にはまらないイエス。固い精神のパリサイ派には受け入れられなかった。キリスト教徒の多くは頭が固くなって閉ざされた心をもっている。洗礼は受けていても、本当はイエスと出会っていない人も多い。

教会は組織活動を重んじ過ぎて、多くのことをやり過ぎて、救いのことはやっていない。イエスは死後の天国を約束したのではない、救いは今。

講座はコイノニアを提供すること、初代教会は激しい弾圧にコイノニアで耐えた。今の教会に一番欠けているもの。

「自分と出会う。」これがなぜカテキズム教育に入っているのかと疑問に思っている神父もいる。確かに過去のキリスト教学にはなかった。現代人は非人間化され魂を失っている。自分を失っているのである。それはイエスに出会う条件である。イエスのメッセージを自分のものとして聴けて初めて受け入れることのできるもの。客観的な真理として眺めている限り、無縁な存在。

グリフィン神父様のこの歴史的なお仕事は、第２ヴァチカン公会議をきっかけにしたものでした。「第２ヴァチカン公会議は大きな刷新であった。残念ながらだんだんに薄らいできたと嘆く人も多い。」と話されました。要理教育研究も取り上げられ、マニラで開かれた研究集会があり、予備段階が必要と話し合われた。しかしグリフィン神父様の講座の前半分である「自分と出会う」「キリストと出会う」は決してカケキズム教育への準備段階といったものではなく、それこそがイエスにであうという究極の目的にそったもので、これは聖霊に導かれた新しい創造の道であったのです。またそれは信徒こそその道しるべを担う案内役としてふさわしいものかも知れないのです。

リーダ養成講座が終わって１年たったこの５月、グリフィン神父様も招いて、受けた仲間が再会しました。集った仲間のあるものは、その教会で初めての入門講座を開いていたり、すでにある講座の助手をやらせてもらったり、すでに経験のあるものはその内容をより深いものにしたりしていました。
グリフィン神父様は、昨年は故郷のアイルランドに一時帰国され、御兄弟などとひさしぶりの再会を果たされてこられたのですが、この間日本でのこの講座のことに思いをめぐらされまた話題にされたようです。このように信徒が講座をやっているなど、実はアイルランドでは考えられないことと云われました。おそらく、それはアイルランドに限らず、数多くの信徒が自信をもってこんな講座を開いているのは、このグリフィン神父様の指導によったものだけではないでしょうか。私も毎年この講座をくり返していますが、その度に新しい自分に生まれ変わっているような気がしています。

野口幹夫